マルチプルインカムってなに?
■マルチプルインカムは先人の教え
 明治の日本には「財布はふたつは持ちなさい」という言葉がありました。

 これは、たったひとつの収入源に頼っていたのでは、世の中の変化によっていつどうなるかわからない。
なので、常に収入源を複数持っておくこと。
それが人生のファイナンシャルにおけるリスクヘッジになるという意味です。

 このように「マルチプル・インカム」という考え方自体は、特に新しいものではなく、過去からあったものです。

 しかし、ある時期から日本人は、この先人の大切な教訓を忘れてしまいました。
 かわって「2足のわらじは履くな」という言葉だけが、よく取り上げられるようになりました。
 それは、1950年の朝鮮戦争による特需から、日本が高度成長期に入り、「終身雇用」とか「年功序列」が通常のこととして捉えられていた時代です。

 「終身雇用」とは、企業が新卒社員を雇用し、その関係を定年まで保証する慣行(法的保証は無い)。
 「年功序列」とは、能力や成果に関係なく、加齢とともに賃金は上昇し続けるという慣行です。

 この時代が約40年(朝鮮特需〜バブル崩壊)も続いたため、いつしか、日本人の多くが「終身雇用」「年功序列」を特別なことではなく、ごく当たり前のこととして捉えるようになりました。
 江戸時代の日本人が、「鎖国」を古来から続いてきた制度と思い込んでいたのに似ています。

 しかし実はこれは、世界的に見ても、歴史的に見ても、極めて異例な慣行なのです。

■終身雇用はいまや過去の歴史
 当時は冷戦(アメリカとソ連、資本主義陣営と共産主義陣営の対立)の時代。
 アメリカにとって、対立の最前線に位置する日本を、経済的に復興させ、一定の国力にしておくことは、とても重要なことでした。
 日本は高い関税率の維持を容認され、円の価値を固定(1ドル=360円)され、当時の欧米先進諸国に比べて安い人件費と、高い技術力を武器に、世界第2位の経済大国にまで昇りつめました。
 しかしやがて、日米貿易摩擦などが表面化するにつれ、日本も世界の枠組みの中での自由競争を要求されるようになり、円の価値は変動するようになり、人件費は先進諸国と肩を並べました。
 その結果、日本企業も国際競争の波を真正面から受けることになったのです。

 企業の売上や利益は本来、景気その他の動向によって、膨張・縮小するものです。
 「終身雇用」「年功序列」という慣行を支えていたものは、当時の「鎖国時代」の日本に存在した、安定した右肩上がりの特殊な経済状況でした。
 その中では、企業は労働力を安定して確保する必要があったのです。

 しかし、今やすっかり事態は変りました。
 日本企業は国際競争の中に身をさらしています。
 それは、少し円高になっただけで、業績が順調であっても、巨額の損失が出る世界です。
 その中で企業が、そして日本という国家が生き残っていくためには、人件費の増減を柔軟に行えるようにせざるをえません。

■リスクヘッジとしてのマルチプルインカム
 今の10代、20代の人の中には「終身雇用」「年功序列」という言葉すら知らない人もいます。
 正社員として就職しても、リストラやレイオフは当たり前。
 どんな大企業でも、専門職でも、公務員ですらもはや【安全圏】とは言えません。

 その中で、例えばサラリーマンの人が、給与収入のみに頼って生活するということは、会社の業績に大きく依存することになります。
 企業の都合によって、10年後、20年後、あるいは来年、突然収入がゼロになることも充分に考えられます。
 これでは、人生の経済設計として、あまりにも不安定で不確かです。
 なので、給与所得者でも、給与以外の複数の収入源を持つべき。
 これが「マルチプルインカム」という考え方です。

 現在、終身雇用と呼べるような実態は従業員1000人以上の大企業の男性社員に限られており、その労働人口に占める比率は8.8%にすぎません。
 しかも、その割合は今後も下がり続けることが予想されます。
 雇用の確保のため、「ワークシェアリング」の考え方を取り入れ、社員の副業・複業を推奨する大企業も増えています。

 いまこそ、私たちは明治の先人の教訓、
 「財布はふたつは持ちなさい」 を思い出すべき時なのです。

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